赤ちゃんの発達や姿勢、親子の愛着形成、育児の負担軽減。
抱っこひもは、それらに深く関わる「特別な道具」です。
でも、すべての抱っこひもがその力を発揮できるわけではありません。抱っこひもが「特別な道具」になるには、それ相応の構造や使い方が必要です。
だからこそ、支援者が「どんな道具を」「どう扱うか」を見極める視点が重要になります。
目の前の親子に合わせて、今ある道具でなんとかする。
それも、もちろん大切な支援のひとつです。
でも、それだけでは赤ちゃんの発達や、社会全体の「抱っこひも事情」は変わりません。
「どの抱っこひもを・どう扱い・どう伝えるか」。
その一つひとつに意識を向けることで、支援の目的や方向性は大きく変わっていきます。
ドイツのトラーゲンの視点で見ると、発達や姿勢へのサポートという観点から本当におすすめできる抱っこひもは、ごく限られています。
赤ちゃんにとって無理のある道具が当たり前のように使われているのが現状です。親が自力で最適な道具を選ぶのは簡単ではありません。
だからこそ、支援者には「道具そのものを見る目」が求められます。
トラーゲン視点から見れば、「おすすめできる道具の基準」はある程度明確です。でも、実際に相談される抱っこひもは、そこには当てはまらないものの方が多いです。
だからこそ支援者には
・自分が伝える内容に軸を持つこと
と
・養育者には、状況に応じて寄り添う柔軟さ
この両方が必要です。
目の前の養育者に対しては、どんな道具を使っていても、否定せず、寄り添う関わりが大切です。
けれど、それだけでは本当に必要な情報が届かないこともあります。
だからこそ、講座や発信の中では、支援者自身がブレない視点と根拠をもって伝えることが、信頼につながります。
今、私たち支援者にできることは、
・「いま目の前の親子」に寄り添うことと、
・「これからの抱っこひも事情」を少しずつでも変えていくこと。
ですが、この2つは分けて考えることが必要です。
後者のためには、発達や姿勢への理解を持ち、根拠ある理論に基づいて伝えていける支援者の存在が欠かせません。
抱っこひもを「発達と育児を支える特別な道具」という視点から伝えるということに対して、支援者自身が軸を持つこと。その軸を持ちながら、現場では柔軟に対応していくこと。
高いスキルが求められるかもしれません。でも、だからこそ抱っこひも支援は、専門性とやりがいのある仕事なのです。
D-SuB SIGでは、正解を与えるような一方通行の学びは行いません。
トラーゲンの基礎をベースに、支援者自身が
「自分はどう考えるか」
「自分は何を伝えていきたいか」
を整理しながら、自分なりの“支援の軸”を育てていくことを大切にしています。
そのために、感性アプローチを用いた対話型の講座スタイルを採用しています。
ただ知識を教わるのではなく、自分の体験や価値観と照らし合わせながら、気づきを深めていく。それぞれの背景や思いを尊重しながら、支援者としての視点や軸が少しずつ育っていく。
そんな場づくりを心がけています。
また、講座の学びで終わらず、その後もつながりを保てるコミュニティがあります。支援の現場で悩んだとき、問い直したいとき、いつでも立ち返れる場所で「支援者としての在り方」を自分自身で見つめることができます。
だからこそ、SIGでは「支援者としての軸」が自然と見つかっていくのです。
今目の前の親子に「抱っこひもをどう使うか」の支援だけではなく、
未来の親子に向けて「どんな道具を選び、どう伝えるか」。
その視点を持つことが、支援のあり方を変えていきます。